日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
術中の胸骨圧迫が原因と考えられる肝損傷の1例
菅 淳若松 弘也鴛淵 るみ西山 光郎松田 憲昌松本 聡松本 美志也
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2015 年 22 巻 4 号 p. 257-260

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抄録
胸骨圧迫による稀な合併症の1つに肝損傷がある。今回我々は術中に胸骨圧迫を施行し肝損傷をきたした症例を経験した。症例は83歳,女性。食道癌術後縫合不全で,保存的加療中,大量に吐血し,ショックとなった。胸部下行大動脈から縫合不全部への穿通と診断され,緊急ステントグラフト内挿術が予定された。術前,術中の大量輸血に伴う高カリウム血症をきたし,術中心肺停止となったため,外科医により胸骨圧迫が施行された。術後,手術部位の評価のため造影CT検査を施行したところ,腹腔内出血を伴う複雑型深在性肝損傷を認めた。術中の胸骨圧迫が原因と考えられたが,循環動態は安定しており経過観察となった。肝損傷の原因について,術中のサージカルドレープにより圧迫位置を視認できず通常より尾側で圧迫していた可能性や,圧迫の深さが過剰であった可能性が考えられた。
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© 2015 日本集中治療医学会
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