日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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22 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
原著
  • 岩田 博文, 上原 健司, 松山 薫, 寺田 統子, 鷹取 誠, 多田 恵一
    2015 年22 巻4 号 p. 247-252
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/07/10
    ジャーナル フリー
    ICUでの腎機能評価として,1時間蓄尿クレアチニン・クリアランス〔1hr creatinine clearance(CCr)〕については報告がない。そこで今回,24hrCCrを標準検査として1hrCCrの精度を検討した。2012年8~10月の当院ICU成人患者を対象とした。24時間蓄尿の後に1時間蓄尿を行い,それぞれのCCrを求めた。2つのCCrの差に影響する因子の検討には重回帰分析を用いた。42症例に56測定が行われた。2つのCCrの相関係数は,r=0.72(P<0.0001),biasが14.2 ml/min,95%一致限界が-59.8~88.2 ml/minであった。CCrの差に有意に影響する因子は,1時間蓄尿中Cr,1時間蓄尿量とその直前1時間尿量の変化,estimated glomerular filtration rate(eGFR)の変化であった。ICUにおいて1hrCCrは24hrCCrの代替とはなりえない。1hrCCrは測定誤差に加え,急激な腎機能の変化をとらえている可能性がある。
症例報告
  • 水野 香織, 成瀬 智, 小林 充, 御室 総一郎, 小幡 由佳子, 土井 松幸, 佐藤 重仁
    2015 年22 巻4 号 p. 253-256
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/07/10
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離の保存的治療に鎮痛,降圧,安静のための基本薬剤としてデクスメデトミジン(dexmedetomidine, DEX)を使用した。【対象】2010年1月から2012年2月に,当院ICUにて保存的治療を実施した急性大動脈解離の14症例。【方法】鎮痛鎮静,降圧,脈拍調節のための併用薬剤,気管挿管の有無を後ろ向きに検討した。【結果】DEXは0.07~0.79μg/kg/hrで投与し,投与期間は132±56時間であった。併用薬剤は,塩酸ニカルジピン0.008~0.14 mg/kg/hr(14症例)の他,塩酸ランジオロール(5症例),フェンタニル(9症例),ニトログリセリン(3症例)であった。夜間睡眠確保のためにハロペリドールを6症例,リスペリドンを2症例で併用した。全症例を気管挿管なしに治療できた。【結語】急性大動脈解離の保存的治療の基本薬剤としてDEXは有用であった。
  • 菅 淳, 若松 弘也, 鴛淵 るみ, 西山 光郎, 松田 憲昌, 松本 聡, 松本 美志也
    2015 年22 巻4 号 p. 257-260
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/07/10
    ジャーナル フリー
    胸骨圧迫による稀な合併症の1つに肝損傷がある。今回我々は術中に胸骨圧迫を施行し肝損傷をきたした症例を経験した。症例は83歳,女性。食道癌術後縫合不全で,保存的加療中,大量に吐血し,ショックとなった。胸部下行大動脈から縫合不全部への穿通と診断され,緊急ステントグラフト内挿術が予定された。術前,術中の大量輸血に伴う高カリウム血症をきたし,術中心肺停止となったため,外科医により胸骨圧迫が施行された。術後,手術部位の評価のため造影CT検査を施行したところ,腹腔内出血を伴う複雑型深在性肝損傷を認めた。術中の胸骨圧迫が原因と考えられたが,循環動態は安定しており経過観察となった。肝損傷の原因について,術中のサージカルドレープにより圧迫位置を視認できず通常より尾側で圧迫していた可能性や,圧迫の深さが過剰であった可能性が考えられた。
  • 濵田 暁, 濵田 奈保, 松本 智子, 徳丸 さやか, 鬼頭 英介, 難波 健利, 岡本 卓
    2015 年22 巻4 号 p. 261-263
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/07/10
    ジャーナル フリー
    45歳,男性。肥大型閉塞性心筋症に対し心室中隔心筋切除術が行われた。術前に重複大動脈弓を指摘されていたが血管輪による気道の圧迫はなく,呼吸器症状を認めなかった。術後,抜管直後より呼気時の喘鳴,呼吸困難を認め再挿管となった。気管支鏡検査で,呼気相に気管膜様部が気管内腔に向かって膨隆する気管狭窄像を認め,気管軟化症と診断した。気管切開を行い,術後11日目に人工呼吸から離脱,12日目にICUを退室した。気管軟化症の原因は気道支持組織の脆弱化とされているが,本症例では手術侵襲によってその脆弱性が顕在化したと考えられた。原因として大動脈への手術操作により血管輪周囲の浮腫が生じ,血管輪に囲まれた気管を圧迫したこと,手術操作により気管膜様部の支持力が低下したことが考えられた。成人の重複大動脈弓を有する手術症例において,術前無症状であっても手術侵襲により気管軟化症を発症する可能性がある。
短報
レター
調査報告
  • 辻尾 有利子, 志馬 伸朗, 徳平 夏子, 大澤 智美
    2015 年22 巻4 号 p. 285-288
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2015/07/10
    ジャーナル フリー
    【目的】日本の小児集中治療室(PICU)の鎮痛・鎮静管理の実践現状を看護師の視点から明らかにする。【方法】看護単位が独立した25施設のPICUの看護師を対象に,施設の実践現状に対する質問紙調査を行った。【結果】17施設より回答を得た。鎮痛・鎮静に関して,客観的評価を行っている施設はそれぞれ41.2%・23.5%,目標深度を設定している施設は23.5%・41.2%,マニュアルがある施設は11.8%・5.9%,看護師主導の管理を行っている施設は29.4%・17.6%であった。薬物療法では,ミダゾラム,フェンタニル,デクスメデトミジンの持続投与が多かった。多くの施設が離脱症状の問題について認識し,積極的に非薬物療法に取り組んでいたが,鎮痛・鎮静管理に満足と回答した割合は29.4%・47.1%と低かった。【結語】PICUの看護師にとって鎮痛・鎮静管理の現状は,満足すべき状況ではないと考えられた。
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