抄録
【目的】大血管手術患者におけるICU-acquired delirium(ICU-AD)発症に術前認知機能が関連するか否かを検討した。【方法】対象は待機的に大血管手術を行った65例とし,ICU-AD発症群と非発症群に分類した。年齢,性別, BMI,既往歴,mini-mental state examination(MMSE)スコア,手術情報,気管挿管時間,ICU滞在日数,術後合併症,鎮静・鎮痛薬の有無について2群間で比較検討した。【結果】ICU-ADの発症率は27.6%であった。ICU-AD発症群の術前MMSEスコアは非発症群と比べ有意に低値を示した(25.1±3.9 vs 27.9±2.1,P<0.01)。ロジスティック回帰分析にてICU-AD発症の予測因子は術前MMSEスコアが抽出された。またreceiver operating characteristic(ROC)curveでは術前MMSEスコアのカットオフ値が26.5点〔area under curve(AUC)74%,95%CI 0.580~0.891,P<0.01〕であった。【結論】大血管術後患者において,術前MMSEスコア26点以下がICU-AD発症の予測因子となることが示唆された。