日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
糖尿病性ケトアシドーシスに続発した急性呼吸促迫症候群の一例
吉田 浩輔志馬 伸朗山下 大生井上 京堤 貴彦田中 博之別府 賢笹橋 望
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2016 年 23 巻 2 号 p. 149-153

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抄録

37歳,女性。意識障害のため救急搬送された。8歳で1型糖尿病を発症し,34歳でインスリンポンプ療法を導入されていた。精査の結果,糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis, DKA)の診断にて入院となった。DKAは一時改善するも,入院48時間後に突然の呼吸不全を発症し,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)と診断された。人工呼吸管理を行うも5 l/dayに及ぶ大量の気道分泌物の排出に加え,P/F比65と著明な酸素化不良があり,体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を導入した。その後呼吸状態は改善し,第12病日にECMOを離脱するもカテーテル菌血症から感染性心内膜炎を合併し,多臓器障害のため第35病日に死亡した。本邦におけるDKAのARDS合併報告は少なく,過去にもその死亡率が極めて高いことが示唆されており,本症例でも救命できなかった。ただし,本症例ではDKAに合併したARDSの治療として,ECMOによる急性期呼吸補助を考慮しうる可能性も示唆された。

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© 2016 日本集中治療医学会
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