日本集中治療医学会雑誌
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23 巻, 2 号
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編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 野村 岳志
    2016 年 23 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    肺エコー診断が集中治療領域に浸透してきている。肺エコーの利用といえば胸腔内の液体貯留の確認のみと考えられていたが,プロトコール化されたアーチファクト画像の理解により種々の病態が把握できるようになった。肺をエコーで診るというより,胸膜の動きと種々のアーチファクトを組み合わせて肺の状態を把握すると考えたほうが分かりやすい。そしてベッドサイドで短時間に種々の病態が診断できるようになり,不安定な患者状態のpoint-of-care診断に占める肺エコー診断の役割が増している。今後,異常呼吸音,副雑音などを聴診技法で教育するように,肺エコーも教育が必須となる診断技法と考える。この総説では,基本的な知識と主に診断に用いられる所見,肺エコーでの代表的な診断法,またピットフォールなどについて解説する。
原著
  • 山田 章子, 池松 裕子
    2016 年 23 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】日本語版Critical-Care Pain Observation Tool(CPOT-J)の信頼性・妥当性・反応性を検証した。【方法】心臓血管外科患者27名を対象に,ICU勤務1年以上の臨床看護師16名と研究者間の一致率,CPOT-JとRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS),バイタルサイン,numeric rating scale(NRS)との関連および痛み刺激直前・直後・20分後のCPOT-Jを評価した。【結果】CPOT-Jの評価者間一致率はκ=0.803で,CPOT-JとRASS,sBP,dBP,HRで弱い正の相関(r=0.260,r=0.343,r=0.337,r=0.302)を,呼吸数,NRSで中等度の正の相関(r=0.601,r=0.652)を認めた。さらにCPOT-Jは,3つの評価時期の中で,痛み刺激直後が最も高かった。【結論】今回,興奮と痛みとの弁別は検証できなかったが,基準関連および収束妥当性はある程度見出すことができた。CPOT-Jは優れた評価者間信頼性があり,ICU患者の痛みの程度とその変化を評価することができる尺度である可能性が示唆された。
  • 水野谷 和之, 横山 健, 川名 信, 片山 勝之, 森本 裕二
    2016 年 23 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】心臓手術後の急性腎傷害(acute kidney injury, AKI)は短期長期的な予後と関連する。今回我々は,人工心肺を使用した心臓手術後に発生するAKIに関して後方視的に検討した。【方法】2011年から2013年の期間に当院で人工心肺使用下に心臓手術を行った成人症例を対象とした。AKIは術後7日以内に発症したものと定義し,診断にはAcute Kidney Injury Networkの基準を使用した。【結果】対象症例は263例,AKI発症例は64例(24.3%)であった。2例が術後1週間以内に腎代替療法を必要とした。多変量解析の結果,男性,糖尿病,BMI,術前の推算糸球体濾過量,人工心肺時間がAKI発症に有意に関連していた。AKI群の91%がstage 1,78%が2日以内にAKIから離脱していた。【結論】性別以外のAKIリスク因子は過去の報告例と共通するものであった。AKI群の多くが軽症であり,短期間で改善が得られていた。
症例報告
  • 吉田 浩輔, 志馬 伸朗, 山下 大生, 井上 京, 堤 貴彦, 田中 博之, 別府 賢, 笹橋 望
    2016 年 23 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    37歳,女性。意識障害のため救急搬送された。8歳で1型糖尿病を発症し,34歳でインスリンポンプ療法を導入されていた。精査の結果,糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis, DKA)の診断にて入院となった。DKAは一時改善するも,入院48時間後に突然の呼吸不全を発症し,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)と診断された。人工呼吸管理を行うも5 l/dayに及ぶ大量の気道分泌物の排出に加え,P/F比65と著明な酸素化不良があり,体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を導入した。その後呼吸状態は改善し,第12病日にECMOを離脱するもカテーテル菌血症から感染性心内膜炎を合併し,多臓器障害のため第35病日に死亡した。本邦におけるDKAのARDS合併報告は少なく,過去にもその死亡率が極めて高いことが示唆されており,本症例でも救命できなかった。ただし,本症例ではDKAに合併したARDSの治療として,ECMOによる急性期呼吸補助を考慮しうる可能性も示唆された。
  • 鶴見 昌史, 古瀬 領人, 岡﨑 大武, 白壁 章宏, 富田 和憲, 品田 卓郎, 畑 典武, 清水 渉
    2016 年 23 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    冠動脈自然解離は冠動脈造影での内膜亀裂によるフラップや偽腔の存在により診断されてきた。今回,光干渉断層法で解離腔を明瞭に観察しえた2例を経験した。症例1は冠危険因子のない50歳,女性(非ST上昇型急性冠症候群)。冠動脈造影で右冠動脈中間部に高度狭窄を認め,血管内超音波では全周性冠動脈血腫を確認した。光干渉断層法で中膜外膜間に解離腔を認め,冠動脈自然解離と診断した。症例2は喫煙歴のある42歳,女性(ST上昇型急性冠症候群)。冠動脈造影で左前下行枝に内腔平滑な狭窄(#6,#7:90%,#8:90%)を認めた。光干渉断層法で全周性に解離腔を認め,冠動脈自然解離と診断した。2例とも冠動脈造影で内膜亀裂によるフラップを認めず,動脈硬化性変化に乏しい狭窄病変であった。冠動脈造影のみでは見逃しやすい冠動脈自然解離を,血管内超音波と光干渉断層法により詳細に把握できたので報告する。
  • 南 絵里子, 石川 友規, 三枝 秀幸, 川上 直哉, 岩崎 衣津, 小林 浩之, 實金 健, 時岡 宏明
    2016 年 23 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    レジオネラ肺炎はときに重症化して治療に難渋する。我々はレジオネラ肺炎による重症急性呼吸促迫症候群の2例をpermissive hypoxemiaを併用して救命できた。症例はいずれも尿中抗原によりレジオネラ肺炎と診断して,レボフロキサシンを静脈内投与した。症例1は59歳男性でP/F比は64,症例2は64歳男性でP/F比は58まで低下した。人工呼吸は圧支持換気により吸気終末プラトー圧を25 cmH2O前後に保った。FIO2は0.6~0.7を目標にSpO2 88%,PaO2 50 mmHg前後を許容した。臓器の虚血症状と代謝性アシドーシスの進行はなく,数日で酸素化は改善傾向を示してその後抜管した。レジオネラ肺炎は,抗菌薬が奏功するまでの人工呼吸管理が予後を左右する。肺保護戦略の低い気道内圧と高濃度酸素投与を回避するpermissive hypoxemiaにより,臓器障害を起こすことなく救命し得た。
  • 西山 友貴, 藤原 康嗣
    2016 年 23 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    カルベジロールとプロパフェノンの過量摂取によると考えられる心停止蘇生症例を経験した。80歳の女性が心停止で搬送された。高血圧,発作性心房細動,アルツハイマー型認知症の既往を有していた。胸骨圧迫,アドレナリン投与,人工呼吸で心拍再開したが,高度徐脈(10~20 /min)となり,アドレナリン持続投与を必要とし,一時的ペーシングを開始したが頻回に機能不全を生じた。約10時間後に徐脈は改善(70 /min)し,アドレナリン,ペーシングは不要となった。後にカルベジロール,オルメサルタン,アゼルニジピン,プロパフェノンを過量摂取したことが判明した。後日薬物血中濃度が判明したが,プロパフェノンとその代謝産物が高濃度であった。心停止,高度徐脈,ペーシング不全の原因は,カルベジロール,プロパフェノンの過量摂取と考えられた。高齢者ではプロパフェノン中毒が生じやすく心停止に至る危険性が大きい。
  • 平松 有, 矢野 圭輔, 湯通堂 和樹, 今中 大, 佃屋 剛, 米澤 大, 植屋 奈美, 垣花 泰之
    2016 年 23 巻 2 号 p. 167-169
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性。畑仕事中に竹箒で左前腕外側を受傷した。受傷9日後より左上肢の筋緊張,頸部後屈,開口障害が出現し,翌日当院へ紹介となった。破傷風と診断し,抗菌薬や破傷風トキソイドワクチン,および破傷風ヒト免疫グロブリン製剤の投与を行った。受傷部は既に痂皮化し,軽度の発赤,腫脹,熱感がみられるのみであったが,腫脹が続いたため第4病日に切開したところ,径10 mm×3 mmの竹片が摘出された。竹片の嫌気性培養にてClostridium tetaniが分離された。鎮静下に循環,呼吸器管理を行い,第55病日にリハビリテーション目的で転院した。Clostridium tetaniが分離培養されることは稀とされているが,今回抗菌薬投与中にもかかわらず,異物より分離培養されており,摘出できていなければ症状が遷延や再増悪していた可能性がある。破傷風を疑った場合には,創部での異物遺残の可能性を考え,積極的なデブリードマンと洗浄を行うことが望ましいことを再認識させられた。
  • 荻原 重俊, 田村 卓也, 上村 亮介, 立石 浩二, 横山 健, 川名 信
    2016 年 23 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    【緒言】近年,重症頭部外傷における持続脳波モニタリングの重要性が報告されている。今回,小児の重症頭部外傷の急性期においてamplitude-integrated electroencephalogram(aEEG)を用いた神経モニタリングを行った2例を経験した。【症例】症例1は交通外傷による急性硬膜下血腫と診断された生後3ヵ月女児。第2病日からけいれん発作を認めた。臨床的なけいれん発作が頓挫した後もaEEGにて非症候性けいれん発作の群発が検出された。aEEGモニタリングを継続し,抗けいれん薬の調整が行われた。症例2は交通外傷によるびまん性軸索損傷と診断された7歳男児。けいれん発作の鑑別のためにaEEGを用いた緊急脳波検査が施行され,てんかん波がないことが確認された。【結論】小児の重症頭部外傷においてaEEGは外傷後けいれん発作の検出に有用であり,全身管理の質を向上させる可能性が示唆された。
短報
レター
委員会報告
  • 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
    2016 年 23 巻 2 号 p. 185-281
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/18
    ジャーナル フリー
    本ガイドラインは,2012年10月に発足した日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会が作成した。海外では重症患者を対象とした栄養管理ガイドラインが複数存在するが,本邦には存在しない。そこで,国際ガイドラインでは言及されないが本邦で行われている治療,海外では行われているが本邦には存在しない治療なども考慮し,本邦の臨床に適応した推奨を提示した。各推奨作成にあたって,既存のシステマティックレビューとメタ解析,国際ガイドラインの推奨を流用することが可能かを検討し,必要であればシステマティックレビューを行った。なお,栄養管理が生命予後を左右することから,本ガイドラインの名前に「栄養管理」ではなく「栄養療法」を用いた。本ガイドラインは本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインであり,臨床の現場で適切に活用されることを期待している。
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