抄録
症例は67歳,男性。第4,5腰椎の後方椎体間固定術施行直後に全身性の痙攣を起こし,遷延する意識障害を認めた。手術中に明らかな低酸素血症や持続する低血圧を認めなかったにもかかわらず,頭部CTおよびMRI検査にて低酸素脳症に特徴的な画像変化を認め,術後の硬膜外ドレナージの量が多いことと併せて,pseudohypoxic brain swelling(PHBS)が原因と考えられた。硬膜外ドレーンを抜去し,体位を水平位とするなどの保存的治療を行うことで意識レベルは改善し,最終的には神経学的後遺症を残すことなく独歩退院となった。PHBSは,脊椎手術後の髄液漏出やドレーンの陰圧管理が原因で,急激な髄液喪失によって頭蓋内の静脈還流障害が起こる病態である。脊椎術後の合併症としてPHBSが生じるリスクを把握し,PHBSの病態を理解することは極めて重要である。