日本集中治療医学会雑誌
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23 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
症例報告
  • 柏 健一郎, 小野 富士恵, 木村 康宏, 七尾 大観, 赤川 玄樹, 藤本 潤一, 西澤 英雄
    2016 年 23 巻 4 号 p. 385-388
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性。第4,5腰椎の後方椎体間固定術施行直後に全身性の痙攣を起こし,遷延する意識障害を認めた。手術中に明らかな低酸素血症や持続する低血圧を認めなかったにもかかわらず,頭部CTおよびMRI検査にて低酸素脳症に特徴的な画像変化を認め,術後の硬膜外ドレナージの量が多いことと併せて,pseudohypoxic brain swelling(PHBS)が原因と考えられた。硬膜外ドレーンを抜去し,体位を水平位とするなどの保存的治療を行うことで意識レベルは改善し,最終的には神経学的後遺症を残すことなく独歩退院となった。PHBSは,脊椎手術後の髄液漏出やドレーンの陰圧管理が原因で,急激な髄液喪失によって頭蓋内の静脈還流障害が起こる病態である。脊椎術後の合併症としてPHBSが生じるリスクを把握し,PHBSの病態を理解することは極めて重要である。
  • 竹前 彰人, 金本 匡史, 塩澤 真利子, 神山 治郎, 松岡 宏晃, 戸部 賢, 国元 文生, 齋藤 繁
    2016 年 23 巻 4 号 p. 389-392
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤破裂症例に対するステントグラフト内挿術は,開腹人工血管置換術と死亡率が同等であるとの報告がある。今回は緊急ステントグラフト内挿術を施行したが,術後に腹部コンパートメント症候群が悪化した1例を経験したので報告する。症例は62歳男性,腹部大動脈瘤に対し大動脈閉塞バルーンカテーテルを下行大動脈に留置し,バルーン拡張下に緊急人工血管内挿術を施行し,明らかなエンドリークは認めなかった。しかしその後もバイタルサインの不安定および腹部膨満が増悪し,腹部コンパートメント症候群に至ったため,緊急で開腹減圧術を施行したが,術中に心肺停止状態となり死亡した。大動脈瘤破裂症例に対する人工血管内挿術治療が成功しても,腹部コンパートメント症候群に至ると死亡率が上昇するため,腹部コンパートメント症候群を疑ったら早期に開腹し減圧することが重要であると考えられた。
  • 水口 市子, 藤田 基, 田中 亮, 福田 信也, 荻野 泰明, 古賀 靖卓, 小田 泰崇, 鶴田 良介
    2016 年 23 巻 4 号 p. 393-397
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    Clostridium difficile infection(CDI)に溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)が続発することは稀であり本邦では報告がない。今回,CDIに続発したHUSに対し血漿交換を行い,良好な予後を得たので報告する。症例は71歳の女性。多発外傷で前医入院中,CDIを合併した数日後に血小板減少,腎機能障害を認め,精査加療目的に当院転院となった。転院後,溶血性貧血を呈したため,血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy, TMA)の病態であると判断し,当院入院第11病日より血漿交換を3日間施行した。A disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs,member 13(ADAMTS13)活性は軽度低下であったため,TMAと診断した10日後に血栓性血小板減少性紫斑病を否定しHUSと診断した。血漿交換後は症状増悪することなく,第42病日に他院転院した。
  • 田中 亮, 金田 浩太郎, 戸谷 昌樹, 宮内 崇, 藤田 基, 河村 宜克, 小田 泰崇, 鶴田 良介
    2016 年 23 巻 4 号 p. 398-401
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    当施設では心停止蘇生後患者に対する目標体温管理の導入と維持など,治療を目的とした体温管理に血管内冷却システムを使用している。今回,38歳男性のIII度熱中症患者に対し,体温管理目的に血管内冷却システムを使用し,良好に体温を管理できた症例を経験した。当施設に救急搬送され,体表冷却・冷却輸液などの従来の冷却方法を用いて管理した症例との比較では,目標温度到達時間や冷却速度は両者に差はなかったが,従来型冷却法では体温のリバウンドが認められたのに対して,血管内冷却システムを使用した本症例では目標温度到達後も体温を安定して管理できた。血管内冷却システムは熱中症症例の体温管理にも有用である可能性が示唆された。
  • 石飛 奈津子, 石田 亮介, 山森 祐治, 川上 潮, 小早川 義貴, 新納 教男, 越崎 雅行, 松原 康博
    2016 年 23 巻 4 号 p. 402-404
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    当院で臨床所見から脳死と判断し長期生存した4小児例を経験した。いずれも脳死判定は行われず,ホルモン補充療法を含めた治療を継続した。2014年11月に日本救急医学会,日本集中治療医学会,日本循環器学会から「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン ~3学会からの提言~」が公表され,脳死は終末期として定義された。当院での4症例のうち2症例は当時の社会的背景や終末期に対する認識の相違から,延命治療を継続することとなった。虐待例や家族の病状受け入れの問題から,延命治療中止が困難な例も存在するが,今後は,患児の尊厳を保つためにも医学的に終末期との判断を行い,家族に治療中止を選択肢として提示することも考慮されるべきである。
  • 前畠 慶人, 鳥越 史子, 内山 昭則, 小垣 滋豊, 上野 高義, 澤 芳樹, 藤野 裕士
    2016 年 23 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    小児急性劇症型心筋炎は,心拍出量低下に伴う不可逆的な多臓器障害が急速に進行するため,救命が困難な場合がある。我々は発症早期からの積極的な循環補助によって多臓器障害から回復し,両心室の体外型補助循環装着から約5か月間の集中治療管理を経て,単独の植え込み型左室補助人工心臓装着に移行し,心移植待機に至った症例を経験したので報告する。
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