2017 年 24 巻 5 号 p. 543-548
【目的】術後せん妄を発症した心臓血管外科手術患者における関連要因を検討する。【方法】待機的に心臓血管外科手術を施行した患者88名(65.6±11.9歳)を対象とした。術前にhospital anxiety and depression scale(HADS),mini-mental state examination(MMSE),Barthel index(BI)評価を行い,術中・術後の水分出納量や術前入院日数,ICU在室日数,術後在院日数について調査した。術後に日本語版CAM-ICU(confusion assessment method for the ICU)を使用してせん妄の有無を判定,両群における各指標を比較した。【結果】術後せん妄発症は11名(12.5%)に認められた。せん妄群は非せん妄群に比べ,有意にHADS抑うつが高く(P=0.003),MMSEが低く(P=0.031),水分出納量が多く(P=0.030),ICU在室日数が長い結果であった(P=0.022)。また,ロジスティック解析の結果,せん妄発症関連因子として術後ICU在室日数と術前抑うつ傾向が抽出された。【結論】術前に抑うつや認知機能の低下がある患者の場合と術後に水分出納量が多くICU在室日数が長い患者の場合,術後せん妄を発症しやすい傾向にあることが示唆された。