抄録
【背景】分離肺換気を用いる低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery, MICS)では,再膨張性肺水腫(re-expansion pulmonary edema, RPE)をはじめとした酸素化障害がしばしば発生する。当施設でMICS後の酸素化障害の発生関連因子を検討した。【方法】分離肺換気を用いたMICS 97例を対象に,術後4~6時間後のP/F比により酸素化良好群(H群72例,P/F比>300),酸素化不良群(L群25例,P/F比≦300)で後方視的に関連因子について比較を行った。【結果】H群1例,L群5例がRPEと診断された。L群では術前アルブミン値が低く(P=0.04),分離肺換気時間は長く(P<0.01),術中のFFP(fresh frozen plasma)投与が多かった(P=0.02)。【結論】MICS後において,肺虚脱時間が延長した時や術中FFP投与が行われる症例では,術後低酸素血症となる可能性があり,周術期の呼吸管理には留意が必要である。