2019 年 26 巻 3 号 p. 163-169
【目的】心臓血管外科術後の経口摂取開始遅延例の特徴を調査し,遅延に影響する危険因子を抽出すること。【方法】術後リハビリテーションを実施した成人94例を経口摂取開始までの日数で通常群(7日以内)と遅延群(8日以上)に分け,患者背景因子,手術情報,術後合併症,術後経過について後ろ向きに比較検討し,多変量解析にて遅延に影響する危険因子を抽出した。【結果】遅延群は通常群に比し有意に高齢で大血管疾患が多く,術後脳血管疾患,肺炎,嗄声の合併が多かった。また,人工呼吸期間,鎮静薬投与期間,ICU在室日数,術後在院日数が有意に長く,退院時Food Intake LEVEL Scaleが正常に至らない割合が多かった。さらにロジスティック回帰分析の結果,術後脳血管疾患(OR:48.087,95%CI:2.517〜918.612),肺炎(OR:43.839,95%CI:2.244〜856.619),嗄声(OR:8.448,95%CI:1.276〜55.918)の合併が遅延に影響する危険因子として抽出された。【結論】術後の経口摂取開始遅延例は治療経過が不良であり,術後脳血管疾患,肺炎,嗄声の合併は遅延の危険因子である。