日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
ダビガトラン内服下でくも膜下出血をきたし,緊急手術前に特異的拮抗薬であるイダルシズマブを投与し,周術期管理を行った一例
佐藤 茜幸野 真樹速水 元伊奈川 岳
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 27 巻 1 号 p. 24-27

詳細
抄録

ダビガトランなどの直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant, DOAC)はワルファリンに比べ,凝固モニタリングが必要なく,出血性合併症は減少するため,広く使用されている。しかし,頭蓋内などでの重篤な出血は依然致死的である。今回我々は,ダビガトラン常用中にくも膜下出血および脳内出血をきたし,ダビガトランの特異的拮抗薬であるイダルシズマブを緊急手術前に投与した症例を経験した。症例は76歳,女性。慢性心房細動に対しダビガトランを内服していた。意識障害にて救急搬送され,くも膜下出血および脳内出血と診断した。イダルシズマブ投与後,緊急開頭減圧術,破裂脳動脈瘤クリッピング術を行った。術中出血量を最小限にでき,術後合併症を認めなかった。DOAC内服患者の緊急手術は,止血コントロールに留意した術前準備が必要となる。特異的拮抗薬が使用可能になり,周術期管理の安全性は増したといえる。

著者関連情報
© 2020 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top