日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
陽圧換気により循環動態が破綻したFontan術後鋳型気管支炎の1症例
内村 修二谷口 正彦長嶺 佳弘青山 剛士長濵 真澄與那覇 哲矢野 武志恒吉 勇男
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2021 年 28 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

Fontan術後の患者は,体静脈血が肺動脈へ直接還流する特異的な血行動態を有しており,呼吸循環管理に難渋することが多い。今回,呼吸不全を発症したFontan術後鋳型気管支炎の小児に対し,気管挿管後に陽圧換気を導入した結果,循環動態が破綻した症例を経験した。症例は7歳,男児。鋳型気管支炎を発症後,酸素化が悪化したため,呼吸管理目的にICUへ入室した。気管挿管し,陽圧換気を行ったが,直後より循環動態が破綻した。静脈−静脈膜型人工肺を導入し,酸素化の改善が得られた後,気管支鏡による粘液栓除去術を行った。その後,可能な限り気道内圧を下げた人工呼吸器管理を行い,中心静脈圧を指標に輸液管理を行った。Fontan循環を有する患者では,通常行われる治療介入により循環動態が破綻する危険性がある。手術成績の向上によりFontan循環を有する患者は増加しており,その特異的な血行動態について理解しておく必要がある。

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