2022 年 29 巻 2 号 p. 107-116
【目的】Japanese Intensive Care Patient Database(JIPAD)を用いて,日本における2週間以上の長期ICU滞在患者の実態を明らかにする。【研究方法】2015年4月1日~2019年3月31日のJIPADの熱傷患者を除く成人患者(≧16歳)を対象とした。ICU滞在日数により短期群(≦14日)と長期群(≧15日)に分け,ICU滞在日数,重症度スコア,死亡率,延べ利用病床日数などを比較した。さらに,ICU滞在日数が院内死亡に及ぼす影響の関係も検討した。【結果】対象患者79,620人のうち,3.0%(2,364人)が長期ICU滞在であった。短期群と長期群のICU 滞在日数の中央値(四分位範囲)はそれぞれ,1(1, 3)と21(17, 29),APACHEⅡスコアの中央値(四分位範囲)は,13(10, 18)と23(18, 29),ICU内死亡率は3.3%,18.8%,そして,院内死亡率は 7.2%と39.2%であった。長期群の延べ利用病床数は全体の25.0%で約半数の11.9%は救命救急入院料や特定集中治療室管理料が非加算であったと考えられた。ICU滞在日数と院内死亡の関係は,重症度などで調整しても滞在日数が長くなると死亡リスクが上昇することが示唆された。【結語】JIPADデータより,長期ICU滞在患者は3.0%程度で,長期滞在症例の延べ利用病床・日数は全体の25.0%であった。また,ICU滞在日数が長期化するとICU内死亡率,ICU 退室後院内死亡率が増加することが分かった。