日本集中治療医学会雑誌
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29 巻, 2 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
原著
  • 橋場 英二, 竹川 大貴, 遠藤 英樹, 廣田 和美
    2022 年 29 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    【目的】Japanese Intensive Care Patient Database(JIPAD)を用いて,日本における2週間以上の長期ICU滞在患者の実態を明らかにする。【研究方法】2015年4月1日~2019年3月31日のJIPADの熱傷患者を除く成人患者(≧16歳)を対象とした。ICU滞在日数により短期群(≦14日)と長期群(≧15日)に分け,ICU滞在日数,重症度スコア,死亡率,延べ利用病床日数などを比較した。さらに,ICU滞在日数が院内死亡に及ぼす影響の関係も検討した。【結果】対象患者79,620人のうち,3.0%(2,364人)が長期ICU滞在であった。短期群と長期群のICU 滞在日数の中央値(四分位範囲)はそれぞれ,1(1, 3)と21(17, 29),APACHEⅡスコアの中央値(四分位範囲)は,13(10, 18)と23(18, 29),ICU内死亡率は3.3%,18.8%,そして,院内死亡率は 7.2%と39.2%であった。長期群の延べ利用病床数は全体の25.0%で約半数の11.9%は救命救急入院料や特定集中治療室管理料が非加算であったと考えられた。ICU滞在日数と院内死亡の関係は,重症度などで調整しても滞在日数が長くなると死亡リスクが上昇することが示唆された。【結語】JIPADデータより,長期ICU滞在患者は3.0%程度で,長期滞在症例の延べ利用病床・日数は全体の25.0%であった。また,ICU滞在日数が長期化するとICU内死亡率,ICU 退室後院内死亡率が増加することが分かった。

  • 米谷 聡, 下村 理華, 河合 迪彦, 武井 寛英, 桑原 大輔, 河上 唯史, 池崎 弘之
    2022 年 29 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    【目的】心臓外科周術期におけるイオン化マグネシウム濃度(ionized magnesium, iMg)測定の有用性を判断する。【方法】2018年12月から2019年5月までに行われた待機的心臓手術連続35症例を対象とし,人工心肺使用例(P群:25症例)の周術期iMgの推移と,手術終了時の総マグネシウム濃度(total magnesium, tMg)との相関性を,人工心肺非使用例(C群:10症例)を比較対象として前向きに観察し評価した。【結果】P群のiMgは,心筋保護液投与後に1.04 [0.54〜1.26]mmol/Lと有意に上昇し,術後ICU帰室3時間後においても0.86[0.75〜1.00]mmol/Lと高値で遷延していた。P群手術終了時点のiMgとtMgの相関係数は0.404であった。【結論】心臓外科手術では,心筋保護液使用に伴った高Mg血症が遷延している可能性がある。 その周術期管理に際してiMg測定は,Mg過量投与を防ぐために有用である。

症例報告
  • 小林 敏倫, 須田 慎吾, 中川 雅, 佐野 達, 蒲原 英伸, 河地 茂行
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    プロテインC(protein C, PC)欠乏症による上腸間膜静脈(superior mesenteric vein, SMV)血栓症に対して,ヘパリンとアンチトロンビン(antithrombin, AT)製剤を併用した抗凝固療法が奏功した症例を経験した。症例は46歳,男性。6日前から持続する腹痛を主訴に当院に救急搬送された。腹部造影CTで,門脈本幹からSMVに及ぶ血栓,小腸壁の浮腫性変化,腹水貯留を認めたが,腸管血流は保たれていた。血液検査でPC活性低下を認め,家族歴および既往歴などからPC欠乏症によるSMV血栓症と診断した。ICUにて上記保存的加療を開始したところ,血栓の縮小,腹部所見・血液検査所見の改善を認め,第8病日にICUを退室した。ワルファリンカリウム経口投与を継続し,第22病日に退院となった。ヘパリンとAT製剤を 併用した抗凝固療法はPC 欠乏症によるSMV血栓症の治療の1 つとなりうる。

  • 丸山 直子, 平尾 収, 池村 彩華, 駒田 暢, 田中 成和, 松本 充弘, 山下 健次, 西村 信哉
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    食道癌術後に心タンポナーデを生じることは0.36%とまれであるが,迅速に対応しなければ致死的となるため,術後合併症の一つとして念頭に置く必要がある。今回,我々は胸部下部食道癌に対する胸腔鏡下食道亜全摘・胸骨後胃管再建術後に心タンポナーデを発症した1例を経験した。食道癌術後の合併症として心臓周囲静脈からの出血が原因の心タンポナーデを発症する可能性を念頭に置き,循環動態の変動を認めた場合には,積極的に心臓超音波検査やCT検査などで精査する必要がある。複数診療科との連携により,左右肋間開胸下での止血術を3回施行し,再建胃管を損傷することなく救命することが可能であった。

  • 西山 千尋, 櫻谷 正明, 吉廣 尚大, 松本 丈雄, 筒井 徹, 髙場 章宏, 河村 夏生, 吉田 研一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    60歳代の男性で2型糖尿病に対してメトホルミン内服加療中の患者が,急性腎障害および乳酸アシドーシスのため救急搬送され,重炭酸ナトリウム(Na)投与,透析加療を含めた集中治療を行ったが,加療中に浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome, ODS)を合併した症例を経験した。ODSは慢性的な低Na血症がなくても,急激な浸透圧変化があれば発症しうる。本症例では重度の代謝性アシドーシスに対して重炭酸Naを複数回投与したが,その後に血清Na値の上昇を認めており,ODS発症に影響した可能性があった。代謝性アシドーシスに対する重炭酸Na投与に関しては,有効性や投与方法を含めてまだエビデンスは不十分である。投与の際には,有害事象の1つである高Na血症について十分なモニタリングを行い,慎重に投与適応を判断する必要がある。

  • 栗山 根廣, 西平 賢作, 山本 圭亮, 木村 俊之, 門岡 浩介, 柴田 剛徳
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    急性心筋梗塞における機械的合併症は,発症は稀であるが起こると致死的な経過をたどる事が多い。そのため,早期の診断と緊急での外科的処置が必要となる。今回われわれは,急性心筋梗塞に対する冠動脈ステント留置術後の造影にて左前下行枝遠位部にwinking coronary signを認めた症例を経験した。Winking coronary signは,心室中隔破裂の際に認めるとの報告があり,スワン・ガンツカテーテルを用いて右房圧,混合静脈血酸素飽和度,肺動脈圧を経時的に注意深く観察した。その結果,右房圧の上昇および血圧低下を認め,左室自由壁破裂による心タンポナーデと診断し,緊急手術を行うことにより救命しえた。Winking coronary signと左室自由壁破裂との関連の報告はないが,認めた場合には,心室中隔破裂のみならず左室自由壁破裂も同様に示唆する所見として考慮する必要がある。

  • 池知 大輔, 古賀 靖卓, 原田 佳代子, 八木 雄史, 戸谷 昌樹, 藤田 基, 鶴田 良介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    横紋筋融解症に伴う急性腎障害の経過中に高カルシウム(Ca)血症を認めることがある。その原因は明らかではないが,傷害筋に沈着した石灰の吸収との関連が推察されている。 今回,頻回に撮影されたCTにより,横紋筋内石灰沈着と血清Ca濃度の推移を検証できたため報告する。症例は60歳代,女性。S状結腸穿孔・敗血症性ショックのためICU入室となった。 横紋筋融解症・急性腎障害を合併したため腎代替療法(RRT)を行い,利尿期にRRTを離脱した。これに伴い一過性に高リン(P)血症を発症し,その改善後に重症高Ca血症が出現した。 CTで認めた筋内石灰沈着は,RRT離脱後の高P血症の時期に増悪し,高Ca血症に先立って改善傾向となった。この結果は,血清Ca上昇に石灰吸収が影響していると裏付けるものであり,石灰沈着増悪に影響している高P血症が,亜急性期においても高Ca血症のリスクとなる可能性が示唆された。

短報
レター
委員会報告
  • 日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善検討委員会
    2022 年 29 巻 2 号 p. 165-176
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    【目的】Post-intensive care syndrome(PICS)対策としてのICU退室後のフォローアップに関する実態を明らかにする。【方法】2021年5月7~31日に日本集中治療医学会会員が勤務するICUを対象とし,インターネット上での調査を実施した。【結果】110ユニットのICU のうち,75.5%でPICSという用語や疾患概念が周知・使用され,89.1%で早期リハビリテーションが実施されていたが,55.5%でPICSに関する評価が実施されていなかった。ICU退室先の部署への訪問,PICS外来,退院後の医療機関などへの病院からのPICSに関する情報提供の実施率は,それぞれ32.7%,3.6%,19.1%であった。これらの実施の主な障壁として,マンパワーやPICSに関する知識,組織の理解,診療報酬があった。【結論】ICU退室後のフォローアップの実施率の低さが明らかになった。実施の推進のためには,ICUはもとより,あらゆる医療機能へのPICSに関する啓発強化,エビデンス蓄積の上,診療報酬の評価などを通した医療資源の確保が必要である。

  • 日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会COVID-19 ワーキンググループ, 日本集中治療医学会小児集中治療委員会
    2022 年 29 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会COVID-19ワーキンググループは,新型コロナウイルスの国内流行のいわゆる第5波で,その初期の段階で20 歳未満の患者数が増加していることを把握した。小児科学会との協力体制のもと,小児重症・中等症例発生状況をまとめた。登録症例数は46例。COVID-19肺炎は20例であり,その他の入室理由が過半数を占めた。また,重症症例の診療体制について整理した。

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