2022 年 29 巻 2 号 p. 132-136
60歳代の男性で2型糖尿病に対してメトホルミン内服加療中の患者が,急性腎障害および乳酸アシドーシスのため救急搬送され,重炭酸ナトリウム(Na)投与,透析加療を含めた集中治療を行ったが,加療中に浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome, ODS)を合併した症例を経験した。ODSは慢性的な低Na血症がなくても,急激な浸透圧変化があれば発症しうる。本症例では重度の代謝性アシドーシスに対して重炭酸Naを複数回投与したが,その後に血清Na値の上昇を認めており,ODS発症に影響した可能性があった。代謝性アシドーシスに対する重炭酸Na投与に関しては,有効性や投与方法を含めてまだエビデンスは不十分である。投与の際には,有害事象の1つである高Na血症について十分なモニタリングを行い,慎重に投与適応を判断する必要がある。