2022 年 29 巻 2 号 p. 137-140
急性心筋梗塞における機械的合併症は,発症は稀であるが起こると致死的な経過をたどる事が多い。そのため,早期の診断と緊急での外科的処置が必要となる。今回われわれは,急性心筋梗塞に対する冠動脈ステント留置術後の造影にて左前下行枝遠位部にwinking coronary signを認めた症例を経験した。Winking coronary signは,心室中隔破裂の際に認めるとの報告があり,スワン・ガンツカテーテルを用いて右房圧,混合静脈血酸素飽和度,肺動脈圧を経時的に注意深く観察した。その結果,右房圧の上昇および血圧低下を認め,左室自由壁破裂による心タンポナーデと診断し,緊急手術を行うことにより救命しえた。Winking coronary signと左室自由壁破裂との関連の報告はないが,認めた場合には,心室中隔破裂のみならず左室自由壁破裂も同様に示唆する所見として考慮する必要がある。