日本集中治療医学会雑誌
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総 説
集中治療における日本独自治療の国内認可試験
小尾口 邦彦
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2023 年 30 巻 3 号 p. 163-169

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抄録

日本の集中治療領域では国際的に承認されていない独自の薬剤や医療機器があり,時にガラパゴス化と呼ばれる。2000年以後に認可された独自治療の国内認可試験と公開審査議事録を検討した。シベレスタットは,国内第Ⅲ相試験で有効性を示せなかったが,追加の単 一群試験の人工呼吸器離脱日数が最初の第Ⅲ相試験やARDS network試験を上回り,認可された。シベレスタットの国際試験は,中間解析の180日死亡率において対照群よりも劣ったため,早期中止された。トロンボモジュリンは国内第Ⅲ相試験のDIC離脱率においてヘパリンに対して非劣性を示し,認可された。トロンボモジュリンは,国際試験の28日死亡率において対照群に対して優位性を示せず,海外において認可されていない。AN69ST膜を用いた血液濾過器は,敗血症を対象として単一群試験が行われ,28日生存率がAPACHEⅡスコアによる予測生存率に比して著しく高かったため,敗血症の保険適用を得た。日本の医薬品や医療機器の臨床試験において,死亡率よりも代用指標や単一群試験結果が重視されて認可されることがある。

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© 2023 日本集中治療医学会
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