2023 年 30 巻 3 号 p. 171-177
【目的】外傷や敗血症患者で過大腎クリアランス(augmented renal clearance, ARC)が報告されている。本研究では,これまで報告が少ない腹部大手術におけるARC発生状況を調査し,発生リスク因子を検討した。【方法】2018年10月から2021年3月に当院ICUに入室した肝胆膵長時間手術後患者をARC発生の有無で比較検討した。6時間蓄尿によるクレアチニンクリアランス(creatinine clearance, CrCl)≧130 mL/min/1.73m2をARCと定義した。【結果】対象144例(年齢中央値71歳)のうち,ARC発生は55例(38%)であった。多変量解析の結果,年齢(若年),術前腎機能,術中赤血球輸血がARC発生と関連していた。術翌日の推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate, eGFR)とCrClには比例誤差を認め,ARC症例では大きな乖離が生じていた。【結語】高齢患者群でも術前腎機能が正常であれば肝胆膵手術後のARCは高率に発生し,その認識にはCrClによる評価が必要である。