日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
大動脈内バルーンパンピングおよび強心薬の使用で血行動態が悪化した急性心筋梗塞後の動的左室流出路狭窄の1症例
堀田 幸造河野 直樹松田 英之宮田 昭彦今井 逸雄佐藤 幸人
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2023 年 30 巻 3 号 p. 179-182

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抄録

症例は80歳代の女性。急性冠症候群に伴う心原性ショックで救急搬送となり,緊急カテーテル治療を行った。術中より血行動態の悪化を認め, 人工呼吸管理・大動脈内バルーンパンピング留置と強心薬投与で集中治療室管理となった。術後も心原性ショックが遷延する状況であった。胸部聴診上, 第4肋間胸骨左縁で収縮期駆出性雑音を認め, さらに,心臓超音波検査でS字状中隔(sigmoid septum)と左室流出路の加速血流を認めたため, 左室流出路狭窄を疑い, 大動脈内バルーンパンピングと強心薬投与を中止した。中止後より血行動態の改善を認め, 心臓超音波検査ではsigmoid septumはあるものの左室流出路に加速血流や圧較差は認めなかった。本症例は,もともとsigmoid septumを有していた高齢女性の心筋梗塞による代償性の心基部の壁運動亢進で動的左室流出路狭窄が生じて血行動態が不安定となったところに, 大動脈内バルーンパンピングと強心薬を使用したことで左室流出路の圧較差が増大して血行動態が増悪したと考えられた。

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© 2023 日本集中治療医学会
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