2023 年 30 巻 5 号 p. 405-409
MRI造影剤であるガドリニウムは,ヨード造影剤と比較して重篤な急性副作用が少ないが,ガドリニウム造影剤の一種であるガドブトロールによるアナフィラキシー反応から心肺停止となり,その後急激な線溶亢進型DICを発症した症例を報告する。70歳代の女性に対して,転移性脳腫瘍の精査のため,造影MRI検査を施行した。ガドブトロール投与後5分でショック,投与後10分で心肺停止となり,心肺蘇生法を施行し,その12分後に自己心拍が再開した。その後,ルート刺入部などに著明な血腫を形成し,フィブリノゲン71 mg/dL,FDP 491.4μg/mL,Dダイマー26.2μg/mLと線溶亢進型DICを呈した。出血傾向の悪化はなく,凝固系検査値は自然回復した。ガドリニウム造影剤は,頻度は低いものの重篤なアナフィラキシー反応を引き起こすことがあり,注意が必要である。また,アナフィラキシーは,急速な一過性の線溶亢進型DICを併発する場合がある。