2023 年 30 巻 5 号 p. 399-403
【目的】 高流量鼻カニューレ酸素療法(high-flow nasal canula oxygen, HFNC)は,周囲に病原微生物の拡散を惹起する可能性がある。模擬装置を使用し,HFNCに伴う飛沫の飛散距離と方向を調査した。【方法】HFNC,人工肺,解剖学的構造を再現した医療用上気道マネキンを用いた実験系を作製した。マネキンの鼻腔および口腔内に人工唾液を噴霧し,人工肺,HFNCの流量やカニューレの装着方向などの条件を変更しながら実験を行った。感水紙を用いて最大飛散距離,飛沫付着面積を計測した。【結果】HFNCの流量が増加するほど飛散距離は大きくなり,最大値は流量60 L/minの時の191 mmであった。飛沫はカニューレ装着側の対側へ多く飛散した。【結論】本実験モデルによるとHFNC実施に伴う飛沫の最大飛散距離は200 mm程度であり,飛沫はカニューレ装着側の対側で多くなる可能性がある。実臨床における飛散距離や方向についてはさらなる検討が必要である。