2024 年 31 巻 4 号 p. 266-270
心膜減圧症候群は,心タンポナーデに対する心嚢ドレナージ後の比較的早期に急激な心原性ショックをきたす,致死率の高い稀な病態である。41歳の男性に,前縦隔腫瘍の浸潤による心嚢液貯留に対して心嚢ドレナージを施行した。その直後に突然の両心室不全となり,心原性ショックをきたした心膜減圧症候群と診断し,カテコラミン併用下にvenoarterial extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)と大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping, IABP)を導入し,救命しえた。心嚢ドレナージ後に血行動態が破綻した際は本疾患を念頭に置き,早期診断と躊躇ないECMOなどの補助循環の導入と循環動態回復までの支持療法を行うことが,この合併症の救命率の上昇に寄与する可能性があると考えられる。