2024 年 31 巻 5 号 p. 477-484
「The right patient in the right place at the right time」。これは看護師の祖であり統計学者でもあるフローレンス・ナイチンゲールが,クリミア戦争で負傷した重症患者を1カ所にまとめ,ICUの最初のモデルの1つを作成した論文の一文である。この格言は現代のICUにも適用され,急性期重症患者の転帰を改善するためには,適切な患者に適切な場所で,そして適切なタイミングで集中治療を提供する必要がある。各国でICUの実状が異なる中,様々なICU入退室基準が策定されているが,現時点で ICU入退室に関する質の高いエビデンスが不足しているため,これらの基準の限界を知る必要がある。本稿では,ビッグデータを用いてICU入退室基準の妥当性を検証した質の高い研究を紹介する。また,日本におけるエビデンスとして,特にDPCデータベースを使用した観察研究を紹介する。本稿では,ICU入退室のエビデンスを将来の日常臨床に活用していただくことを目標とする。