ICUのせん妄患者は,不穏や錯乱などの症状があると鎮静される。人工呼吸患者ではミダゾラムやプロポフォールといった鎮静薬,また,ハロペリドールなどの抗精神病薬が使用されるが,近年はデクスメデトミジンの使用頻度が高くなってきている。患者に最適な浅めの鎮静が勧められ,多くの臨床研究がデクスメデトミジンを用いた鎮静とせん妄発症率の減少やせん妄期間の短縮との関係を示している。デクスメデトミジンの夜間使用は他覚的に良好な鎮静が得られ,現場で好まれるが,これによる鎮静が睡眠に近いという言説には脳生理学上の確実な証拠を欠く。倫理的側面から,終末期の持続鎮静には,①相応性,②医療者の意図,③患者・家族の意思,④チームによる判断の4要件を検討することが,日本緩和医療学会の「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的考え方の手引き(2023)」で提案されている。これらは,せん妄患者を鎮静する際にもあてはまると考えられる。鎮静について日々評価・検討し,それぞれのせん妄患者に相応しい鎮静を考えたい。