抄録
危機(Crisis)の射程が広く、危機・リスクに関連する学問も多岐にわたる中、総合危機管理学の意義が問わ
れている。弁証法での「肯定⇒否定⇒否定の否定」のプロセスにより、高次の思考段階に到達し、対立や矛盾
を包括しながら、高い段階の状態にとどまるというのが、「総合」・「統合」のイメージである。一つに特化す
るスペシャリストとしてだけではなく、浅いが広い範囲に造形を持つジェネラリストの側面を持ちながら行う
危機管理研究が総合危機管理学ともいえる。危機管理学は学術分野としては未だ独立していないが、様々な角
度から学術的な視点を考察し、様々な利害関係がある関係者へ提案や提言を行い、強いナショナル・レジリ工
ンスを目指すのが総合危機管理学といえる。リスクマネジメントの手法に逆転発想のアプローチを加えること
により、総合危機管理学をより発展させることができ、ひいては、対策の斬新さ等から、必ずや新型コロナウ
イルス感染症の蔓延防止に役立つものと思われる。