2024 年 31 巻 5 号 p. 508-512
漢方薬による薬剤性肺炎は薬剤中止により自然に回復する症例が多いため,人工呼吸管理に至る重症例は稀である。患者は82歳の男性,発熱と呼吸困難を主訴に受診した。来院2か月前から突発性難聴に対して柴苓湯を服薬していた。来院10日前から労作時呼吸困難を認めた。近医を受診したところ低酸素血症が認められ,当院へ救急搬送された。入院後,低酸素血症が進行し人工呼吸管理となった。病歴と諸検査から柴苓湯による薬剤性肺炎を原疾患と考え,ステロイド治療を開始した。ステロイド治療開始後から呼吸状態の改善を認めた。治療反応性と入院後の経過も踏まえ,柴苓湯による薬剤性肺炎と診断した。薬剤性肺炎を重症呼吸不全の鑑別に挙げることは重要である。