心臓手術後の心停止は5%弱に発生し,心停止の原因は,致死的不整脈,出血性ショック,心タンポナーデ,徐脈などである。術後の心停止はICUで発生することが多く,心停止時のバイスタンダーが医療従事者であるので蘇生率は高い。しかし,手術後間もない時期の胸骨圧迫は縫合したグラフトおよび大動脈損傷や心破裂の危険があるため,心臓手術後の心停止では通常の心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation, CPR)の手順と異なり即座の胸骨圧迫が推奨されない。ガイドラインでは1分間の胸骨圧迫を回避する蘇生介入が許容されており,その対応と同時に,再開胸術の準備を進める。1分間の対応で心拍が再開しない場合は,やむを得ず胸骨圧迫を開始する。胸骨圧迫は収縮期血圧60 mmHgを目標とする。 発見後1分間の対応では,ショック可能なリズムに対しては3回連続のショックを実施する。 ショックが有効でない高度徐脈と心静止の場合は,術中に挿入したペーシングリードを用いたペーシングを優先する。1分間の介入が不成功に終わったら,5分以内に再開胸による開胸心マッサージを開始する。術後10日目以降の場合にはその場での再開胸は推奨されない。心臓手術後心停止への対応では,シミュレーショントレーニングが有効である。