2025 年 32 巻 論文ID: 32_R30
重症急性膵炎の関与が疑われた呼吸循環不全に対し,静脈脱血-動脈送血(veno-arterial, VA)体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を導入し,救命した症例を経験した。症例は45歳,男性。心窩部痛と低酸素血症を認めICUへ搬送された。入室時原因不明の著明な低酸素血症と循環不全を認め,VA-ECMOを導入した。第2病日にVA-ECMOを離脱,第6病日に人工呼吸器を離脱した。入院時の血液検査で膵酵素の上昇とCT検査で膵頭部の軽度の脂肪織濃度上昇を認めており,原因精査目的に第7病日に胸腹部造影CTを実施したところ,膵全体の腫大を認めGrade Ⅱの重症急性膵炎の所見を認めた。入室時原因不明と考えていた呼吸循環不全は重症急性膵炎によるものであったと考えた。その後は良好な経過を辿り,第11病日にICUを退室し,第24病日に独歩退院した。重症急性膵炎に伴う重篤な呼吸循環不全に対して,VA-ECMOによる呼吸循環補助により救命し得た1例を経験した。