抄録
肺癌により左主気管支狭窄,左完全無気肺を来している患者に対しDumon式気管内ステント挿入術を施行した。ステントを留置し,高頻度ジェット換気(high frequency jet ventilation, HFJV)により左肺を膨張させた直後血圧低下,低酸素血症,心電図II誘導でST上昇,完全房室ブロックを生じ,脳梗塞を合併した。その原因として,再膨張性肺水腫に加えて,肺動静脈内に停滞していた血栓,腫瘍片の飛散により広範な塞栓症を同時に生じた可能性が考えられた。長期に虚脱した肺をHFJVにより急激に再膨張させるときには肺水腫のみならず多発塞栓症に対する注意が必要と考えられる。