日本集中治療医学会雑誌
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錐体外路症状が遷延した重症有機リン中毒の1救命例
服部 憲幸平澤 博之織田 成人志賀 英敏中西 加寿也松田 兼一仲村 将高平野 剛
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2004 年 11 巻 2 号 p. 133-137

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抄録

錐体外路症状が長期にわたり遷延した重症有機リン中毒の1救命例を経験した。患者は70歳女性。うつ病,本態性振戦の診断で精神科加療中,自殺目的にフェニトロチオン約190g,マラチオン約80gを服用し,当院に搬送された。来院時,意識障害,縮瞳,多汗,唾液分泌過多,両上肢の不随意運動を認めた。初療後,ICUへ入室した。意識障害が遷延し,循環動態も不安定となったため,活性炭による血液吸着療法および持続的血液濾過透析を施行した。循環動態は徐々に安定し,意識状態,コリン作動性症状とも改善したが,錐体外路症状が遷延し,服用から7ヵ月以上経過後もParkinson病治療薬の投与を必要としている。有機リン製剤による錐体外路症状についての報告は散見されるが,7ヵ月以上の長期にわたって錐体外路症状が遷延した症例は稀である。本症例は既往に本態性振戦があり,錐体外路の病的素因や遺伝的素因が錐体外路症状の重症化や遷延に関係した可能性が示唆された。

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