抄録
これまでに全く報告がない脳動脈瘤破裂時の脳内グルタミン酸濃度変化をマイクロダイアリシス(microdialysis,MD)でとらえることに成功した。症例は51歳,女性。意識障害にて来院し,頭部CTでくも膜下出血を認め,神経学的にHunt & Kosnik Grade IVと診断し,頭蓋内圧管理を開始した。同時に脳組織に,MDカテーテルを設置した。経過中に血圧・頭蓋内圧の急上昇が認められた。その時期に一致して脳内グルタミン酸値は,正常上限値の190倍の388.5μmol・l-1まで急上昇した。その後,瞳孔,頭蓋内圧の順に正常化したが,グルタミン酸値は正常化までにさらに6時間を要した。その後,血圧・頭蓋内圧の上昇とともにグルタミン酸値は,467.1μmol・l-1まで上昇し,高値が持続した。頭蓋内圧は制御困難となり,死亡退院となった。今後,MDによる脳内グルタミン酸の経時的測定は,重症くも膜下出血に対する積極的治療の判断材料になる可能性があることから,さらに症例を積み重ねる必要性がある。