日本集中治療医学会雑誌
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酢酸中毒の1症例
吉冨 郁又吉 康俊田村 尚柴崎 誠一内田 雅人原西 保典中村 久美子岡 英男
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2004 年 11 巻 3 号 p. 217-221

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抄録
酢酸中毒の1例を経験した。患者は59歳の男性で,自殺目的で30%酢酸を約100ml経口摂取し,約30分後に当院救急部に搬送された。激しい腹痛と嘔吐があり,著明な溶血尿が認められた。無尿,呼吸困難,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC),ショックとなったため,翌日ICUに入室となった。入室後,人工呼吸と持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始し,DICに対する治療を行った。上部消化管内視鏡検査では,腐食性胃食道炎が認められた。1ヵ月間のCHDFの後,腎機能は徐々に回復し,人工呼吸も2ヵ月で離脱できたが,遷延する難治性の下血に対し,約3ヵ月の集中治療を要した。酢酸中毒では局所組織障害だけでなく,溶血,DIC,腎機能障害,肝機能障害,ショック,多臓器不全などが起こるため,急性期の適切な治療が重要である。
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