抄録
塩酸フェニルプロパノールアミン(phenylpropanolamine,PPA)服用後に可逆的な心筋障害と心原性肺水腫を呈した症例を経験したので報告する。症例は既往歴と家族歴に特記事項のない19歳日本人女性で,PPA544mg服用2時間後に嘔吐を主訴に来院した。心電図,胸部単純X線,creatine kinase (CK),心エコー,123I-MIBG(metaiodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィーとスワン・ガンツカテーテルによる血行動態所見で心筋障害と心原性肺水腫と確定診断した。患者はカテコラミン,ホスホジエステラーゼ阻害薬と利尿薬だけで改善し,第12病日に後遺症なく退院した。文献検索から本症例を含めたPPAにより心筋障害を呈した9症例を比較検討した。その結果,可逆的な心筋障害の解剖学的パターンから,本症例の心筋障害はPPAに伴うたこつぼ心筋症の亜型であると推測した。