抄録
悪性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術の周術期の死亡率と合併症の率は非常に高い。悪性胸膜中皮腫6例の術後管理を行い全例退院できた。6例中4例は順調に経過した。しかし,症例1は術中から術後にかけて大量に出血し,重症心不全,呼吸不全を併発した。症例4は重症心不全,呼吸不全に加え,気管支断端が離開し再手術を行った。術後管理が困難な原因は,胸膜,心膜,横隔膜と広範囲に合併切除することによる大量出血と長期にわたる滲出液の喪失であった。循環系の維持のために大量の輸血輸液が必要であった。しかし,肺血管床の減少のために右心不全になりやすく,refillingの時期には容易に両心不全になる。術後心不全を乗り切るためには,完全な止血操作で出血を抑え,適切な前負荷を維持することが最も重要である。