日本集中治療医学会雑誌
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持続脳圧センサーによるインフルエンザ脳症の管理経験
林下 浩士韓 正訓塩見 正司島津 和久氏野 博昭宮市 功典重本 達弘鍛冶 有登
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2004 年 11 巻 3 号 p. 237-241

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抄録
小児のインフルエンザ脳症(influenza-associated acute encephalopathy, IAE)は,高熱時に意識障害,痙攣で発症し急激に昏睡状態となり,死亡および重篤な後遺症を残すことが多い疾患である。今回,1歳4ヵ月,男児のIAEに対し脳圧センサーを挿入した。管理目標は,脳圧(intracranial pressure, ICP)を20mmHg以下とし,ICPのコントロールが不良の場合には,脳灌流圧(cerebral perfusion pressure, CPP)を45mmHg以上とすることとした。当初,ペントバルビタールナトリウムの持続投与とブランケットによるクーリングによりICPは20mmHg以下に維持できていたが,入室24時間後よりICPは上昇傾向を示し,最大値59mmHgにまで上昇した。これに対し,CPPを維持するためノルエピネフリンの持続投与を増量した。ICPのモニタリングにより,急激なICPの変化が把握でき,ペントバルビタールナトリウムの増量,脳温管理の強化などの対応を即時に施行できた。また,ICPの抑制が不可能な場合は,カテコラミンの投与による昇圧によりCPPの維持に努めた。画像では,広範囲の皮質に異常所見を示したことから重度の後遺症が予想されたが,現在,症例は運動機能が徐々に回復傾向である。今回の経験により,脳圧のモニターはIAEの管理に極めて重要であり,またCPPの維持により症例の予後を改善させる可能性があると考えられた。
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