日本集中治療医学会雑誌
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Off-Pump CABG術後に全身性炎症状態が遷延したが高用量ステロイドの投与により改善した1症例
有澤 創志井出 雅洋榎 泰二郎宮脇 郁子宮本 義久水野 好子竹口 有美
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2005 年 12 巻 3 号 p. 207-212

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抄録

非体外循環下冠動脈バイパス術(off-pump coronary-artery bypass grafting, off-pump CABG)術後に原因不明の強い全身性炎症を示し多臓器障害を呈したが,大量のコルチコステロイド投与により劇的に改善した症例を経験したので報告する。症例は72歳男性,既往症は高血圧,59歳時にCABG,70歳時に腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けた。今回増悪する狭心症に対してoff-pump CABGを受けたが,術後3日目より高熱,白血球増多,CRP高値を呈し,ショック,腎不全,高ビリルビン血症を合併した。アレルギー性疾患,感染症は否定的であった。術後12日目に,炎症の治療目的で,メチルプレドニゾロン500mgを3日間投与したところ,発熱,高炎症,多臓器障害は速やかに改善した。メチルプレドニゾロンの投与期間は25日間,その後,術後42日目に無事転棟となった。敗血症,ARDSなどの重症患者に対する高用量ステロイド投与による予後改善は現在否定されているが,今回のように全身性炎症状態のみが病態をなしている場合には有効でありうると考えた。

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