日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
遅発性に発症した輸血関連急性肺傷害の1例
松本 聡徳久 善弘松田 憲昌若松 弘也國廣 充藤井 康彦坂部 武史
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 13 巻 1 号 p. 49-52

詳細
抄録
輸血関連急性肺傷害(transfusion-related acute lung injury, TRALI)は,通常,輸血開始後,1~6時間以内に発症するが,輸血開始16時間後に発症したTRALIを経験した。症例は66歳男性。肝細胞癌で外来経過観察中,腹部膨満,全身倦怠感が増悪し,腹水貯留と貧血を認め入院した。入院4日目に濃厚赤血球2単位を輸血した。約16時間後,呼吸困難を訴え,胸部X線写真,CTで急性呼吸促迫症候群様の両側浸潤影がみられICUに収容した。非侵襲的陽圧換気による呼吸補助,シベレスタットナトリウムの投与,ステロイドパルス療法を行ったが酸素化は改善せず,肝不全も進行し,入室11日目に死亡した。後に判明した検査結果で輸血された濃厚赤血球中に抗HLA-ClassII抗体が検出され,これがTRALIの原因と考えられた。輸血施行時には,このように時間を経て発症するTRALIが存在することを念頭に置く必要がある。
著者関連情報
© 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top