日本集中治療医学会雑誌
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真菌性敗血症に合併した血球貪食症候群の一例
木谷 友洋升田 好樹今泉 均小林 康夫辻口 直紀大曽根 順平吉川 修身並木 昭義
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2006 年 13 巻 3 号 p. 239-242

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抄録
担癌患者の腹膜炎性敗血症の治療中に血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome)を発症した1例を経験した。症例は64歳,男性。既往歴として61歳時に上咽頭癌を発症し肺転移,骨転移が生じたため放射線,手術治療後ステロイド内服中であった。突然の腹痛を生じ当院救命センターへ搬入され上部消化管穿孔を疑い開腹術を施行した。術中の腹水培養でCandida albicansが検出された。術後,急性腎不全の進行,血小板減少,貧血,肝機能障害など多臓器不全が進行したためHPSを疑い第9病日に骨髄生検したところ血球貪食像が確認された。ステロイドパルス療法にて症状は迅速に改善した。その後肺炎を併発したものの第22病日に一般病棟へ退室したが,第29病日に敗血症性ショックのため永眠された。本症例では感染に対する適切な治療の上にステロイドおよび持続血液濾過透析が一時的ではあるがHPSの病勢を抑えることができたと考えられた。敗血症時の血球減少には血球貪食症候群が関与している可能性を念頭に置くことが早期診断・治療に繋がると考えられた。
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