抄録
敗血症性ショックでは一酸化窒素(NO)に起因するcyclic 3',5'-guanosine monophosphate(cGMP)の増加が末梢血管抵抗低下の原因となっている。われわれは敗血症性ショック患者にcGMP産生を抑制するmethylene blue(MB;可溶性グアニール酸シクラーゼ阻害剤)を投与して循環とガス交換への影響を調べた。Hyperdynamic state (CI>3.5l・min-1・m-2)を示した敗血症患者8例を対象として,MB2mg・kg-1を30分間で投与した。投与前,投与直後,投与終了1,2,24時間後に呼吸,循環の各パラメータ,血中cyclic 3',5'-adenosine monophosphate (cAMP),cGMP濃度を測定した。その結果,平均動脈圧,全身血管抵抗係数はMB投与終了直後に著明な増加を認め,1時間後にはやや低下したが24時間後まで有意な増加が持続した。平均肺動脈圧,肺内シャント率,呼吸係数は投与前後で有意に変化しなかった。cGMPは投与終了2時間後に有意に低下したがcAMPは変化しなかった。以上よりMBは敗血症性ショックに対して全身循環動態を改善させるがガス交換には影響を与えないことがわかった。