急性肺血栓塞栓症は循環器救急疾患として位置づけられるようになってきたが,実際には更に軽症な症例が診断されないで多数発症しているものと考えられる。診断には,本症は本邦においても決して少ない疾患ではないという認識と多彩な臨床病像の理解が必要である。また確定診断は迅速に施行される肺シンチグラムでの血流欠損と,肺動脈造影での血流途絶,造影欠損によりなされるが,重篤なショックを呈するものでは心エコー図による右室拡大で診断し治療を行うことも多い。本症の治療の第1選択はヘパリンである。tissue plasminogen activaterによる血栓溶解療法,外科的肺動脈血栓摘除術,カテーテル的血栓吸引療法,下大静脈フィルターに関しては,その適応に一定の見解はなく,今後の検討課題である。また突然死を免れたものでの死亡の多くは再発によるものであり,診断時に主たる血栓源の下肢深部静脈の状況の把握と,その対応が必要である。