抄録
食道癌術後症例では術直後の不安定な循環動態と長期化する呼吸不全の管理に難渋することが多い。その原因の一つに全身性炎症反応症候群の遷延化が考えられる。術後侵襲期の過剰反応をステロイドによって防止することが予後を改善しうるかどうか,食道癌20例における術直後のステロイド単回投与の有用性についてメチルプレドニゾロン10mg・kg-1を術直後に1回投与するステロイド群8例と投与しないコントロール群12例との2群に分けて比較検討した。術直後のメチルプレドニゾロン単回投与はサイトカイン(インターロイキン6および8)の産生を阻害することによって術直後の過剰炎症反応を透度に抑制し,血管外への血漿成分の漏出を減少させた。その結果,新鮮凍結血漿投与量を有意に節減し,呼吸管理期間を短縮した。耐糖能異常,感染あるいは縫合不全を助長させることはなく術後管理に有用であった。