日本集中治療医学会雑誌
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4 巻, 3 号
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  • 林 成之
    1997 年4 巻3 号 p. 191-197
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳の低温療法は、強力な脳保護作用を有するが心肺機能や免疫防御系への侵襲が強く,実際の臨床応用は難しいとされてきた。本論文では,その病態機構として下垂体機能低下に基づく細胞性免疫不全が原因であることを報告し,同時に低体温患者の脳温管理法と全身の集中管理法を明らかにした。脳低温管理の脳保護作用は,脳内熱貯留の防止,酸素代謝の低下,フリーラジカル産生の抑制,シナプス興奮の抑制などによって二次的脳損傷機構を防止している間に,障害された神経細胞の修復に必要な酸素と代謝基質を供給し神経細胞内ホメオスターシスの改善を図ることにある。その際,覚醒や知能獲得に機能するA10神経系の興奮性神経細胞死が脳の低温管理によって免れることが,この治療を受けた患者に知能障害の少ない理由であると考えられる。脳低温管理後にA10神経系の賦活療法を併用し,植物状態から脱却せしめた臨床例は,これを逆説的に証明している。
  • 前川 剛志, 成冨 博章, 野崎 和彦
    1997 年4 巻3 号 p. 199-206
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    中枢神経障害における神経細胞死の機構が解明されつつあり,神経毒性を示すグルタミン酸の異常放出や細胞内Ca2+の蓄積が重要視されている。最近,軽度低体温(32~34℃)がこれらの機構を抑制し,脳保護・蘇生の手段として有望視されているので,その臨床応用について筆者らの症例と米国の頭部外傷例を含めて述べる。
    軽度低体温療法の適応は頭部外傷,脳梗塞,くも膜下出血クリッピング術後スパスム,心肺蘇生後などであり,障害発生後6時間以内に実施する必要がある。脳指向型集中治療の下に,十分な循環血液量維持と末梢血管拡張を行った後に,血液温で32~34℃を目標に2~10日間全身を冷却する。通常の検査やモニターに加えて,内頸静脈球部血液の温度と酸素飽和度の測定が有用である。復温も重要で2~3日かけて行い,決して加温せず,また高体温は避ける。副作用では,不整脈,低カリウム血症,血小板数減少,免疫抑制,高血糖などが重要である。軽度低体温の脳保護効果は明確であり,安全で標準化された患者管理法もほぼ確立できたが,実際の施行ではより一層の慎重さを必要とする。
  • 血漿サイトカインの変動からの検討
    大江 恭司, 村田 克介, 窪田 達也, 大竹 一栄, 布宮 伸, 和田 政彦
    1997 年4 巻3 号 p. 207-213
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    食道癌術後症例では術直後の不安定な循環動態と長期化する呼吸不全の管理に難渋することが多い。その原因の一つに全身性炎症反応症候群の遷延化が考えられる。術後侵襲期の過剰反応をステロイドによって防止することが予後を改善しうるかどうか,食道癌20例における術直後のステロイド単回投与の有用性についてメチルプレドニゾロン10mg・kg-1を術直後に1回投与するステロイド群8例と投与しないコントロール群12例との2群に分けて比較検討した。術直後のメチルプレドニゾロン単回投与はサイトカイン(インターロイキン6および8)の産生を阻害することによって術直後の過剰炎症反応を透度に抑制し,血管外への血漿成分の漏出を減少させた。その結果,新鮮凍結血漿投与量を有意に節減し,呼吸管理期間を短縮した。耐糖能異常,感染あるいは縫合不全を助長させることはなく術後管理に有用であった。
  • 亀上 隆, 丸藤 哲, 五十嵐 みゆき, 牧瀬 博, 松原 泉
    1997 年4 巻3 号 p. 215-219
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    コルヒチンの大量服用により多臓器不全に陥り,不幸な転帰をとった1症例を経験した。患者は16歳,女性。コルヒチン約1gを内服し,32時間後に当科搬入となった。初診時より代謝性アシドーシス,低酸素血症,肝腎障害をおよび播種性血管内凝固症候群がみられた。ICU入室後,酸素吸入,塩酸ドパミン投与を行ったが乏尿が改善しないため,8時間後に持続濾過透析を施行した。しかし,26時間後,全身痙攣発作を契機に循環動態も不安定となった。28時間後には心停止に陥り,3時間にわたる蘇生術にも反応せず永眠した。大量コルヒチン中毒の症状は激烈でその救命は非常に困難と考えられた。
  • 新宮 千尋, 吉武 重徳, 宇野 太啓, 奥田 健太郎, 工藤 治彦, 森 正和, 早野 良生, 野口 隆之
    1997 年4 巻3 号 p. 221-224
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    開心術後に大動脈バルーンポンプを装着した63歳,男性の患者に鎮痛薬,鎮静薬とともに筋弛緩薬のベクロニウム(vecuronium bromide; Vb)を持続投与し,筋弛緩効果の遷延が認められた症例を経験した。術後114時間で360mgのVbを投与し,Vb投与中止から抜管までに7日間を要した。Vbの投与中止後,肝逸脱酵素の上昇を認めた。Vbとその代謝産物の3-ヒドロキシベクロニウムの血中濃度を投与中止後に測定した結果,最高でそれぞれ53.1,142.4(ng・ml-1)であった。今回の筋弛緩効果遷延の原因は,薬物性肝障害によるVbの代謝・排泄の遅延と考えられ,併用薬物による肝機能抑制や低蛋白血症も症状を助長したものと考えられた。
  • 福田 志朗, 宮内 善豊, 中村 ミチ子, 森本 康裕, 清水 清美, 小川 宏
    1997 年4 巻3 号 p. 225-230
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    患者は38歳の女性で,低血圧で来院した。超音波検査で,心臓はびまん性の低収縮状態であった。重症心筋炎の診断で,大動脈内バルーンパンピングと経皮的心肺補助法による補助循環を開始した。その後心筋は高度の低収縮状態となり,5日間は弁の動きが認められなかった。経皮的心肺補助法を340時間,大動脈内バルーンパンピングを415時間施行したのち,心筋の収縮は正常に回復した。人工呼吸を30日間行った。この間急性腎不全となり,持続的血液濾過透析を40日間行った。腎機能も正常に回復した。右下肢の拘縮・運動麻痺を来したが軽快し,意識も正常で第189病日に退院した。劇症型心筋炎で著明な低心拍出状態となった本例では,大動脈内バルーンパンピングと経皮的心肺補助法による補助循環が救命に有用であった。
  • 田村 高志, 中村 ミチ子, 國井 達雄, 森本 康裕, 清水 清美, 宮内 善豊
    1997 年4 巻3 号 p. 231-235
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性呼吸不全で発症し腎不全を合併した抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連疾患を経験した。18歳の女性で,呼吸困難でICUに入室した。血性痰,低酸素血症,尿蛋白と低蛋白血症があり,ステロイドパルス療法を行い一旦軽快した。腎および肺生検で,半月体形成性糸球体腎炎,肺胞出血が認められ,自己抗体の検索でperinuclear-ANCA(P-ANCA)陽性であった。ステロイド内服の経過中,再び肺・腎機能が悪化し,血漿交換と血液透析,ステロイドパルス療法を行い肺機能は改善したが,血液透析は継続が必要となった。約1か月後,肺機能が悪化したため,吸着式血液浄化を施行した。P-ANCAは陰性化したが,血液凝固異常に伴い呼吸不全が悪化し,出血性脳梗塞で死亡した。本症例はP-ANCA陽性のWegener血管炎と考えられた。P-ANCAの定量や白血球数,C反応性蛋白は病態の活動性を正確に反映していたとはいえず,活動性の指標と治療法の選択が問題である。
  • 山口 正秀, 橋本 悟, 山根 哲郎, 浅井 浩
    1997 年4 巻3 号 p. 237
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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