抄録
多臓器不全を合併したインフルエンザA(H3N2)感染の一例を経験した。既往歴に心電図異常を指摘されていた16歳女性が,数日間の感冒様症状の後,呼吸困難となり入院した。呼吸不全に加え,横紋筋融解症,心不全,腎不全を認め,インフルエンザ感染による合併症と診断された。直ちに人工呼吸管理,血液浄化法,カテコラミン投与を開始した。持続的血液濾過法は,水分,電解質バランスの維持およびミオグロビンの除去に効果的であったと考えられる。インフルエンザ感染による致死的合併症は高齢者で稀にみられるが,若年者においても慢性心疾患のある症例では,これを十分考慮し,速やかに対処することが重要である。