高度経済成長期は、人々のライフスタイルや食文化を含めて、日本社会全体が大きな変化を遂げ、現在の菓子の消費に多大な影響を与え、菓子メーカーの新商品開発、菓子業界の市場に変化を促し、業界構造を変えるに至った。本研究は、高度経済成長期を中心に1985年までを対象に、流通やライフスタイル、食文化などの影響を受けた嗜好の変化を背景に、菓子の消費動向や菓子の市場の変化について、また、市場での販売と関わる菓子業界のマーケティングの変遷について明らかにするものである。
分析方法は、家計調査を数量データとして洋菓子、和菓子に区分し、マクロの視点でその消費動向を定量的に分析し、また、いくつかの対象品目を選定し、流通の変化との関係を検討する。そして、菓子業界の各メーカーなどの社史や資料を基に定性的に分析し、菓子業界のマーケティングの変遷を見ていく。
その結果、菓子業界は、高度経済成長期の日本経済の高成長を背景に、洋菓子による「量」の拡大と「質」の変化がみられ、1976年に和・洋菓子の構成比が逆転することで、消費の面から見ても、消費者の嗜好は洋風化し、洋菓子市場が拡大傾向にあることが明らかになった。
また、1985年11月、貿易自由化に伴う大きな課題を菓子業界が一丸となって対応するため全日本菓子協会が発足したことは、菓子業界の構造が変わったことを表す象徴的な出来事であったことが明らかになった。