1999 年 6 巻 2 号 p. 127-132
Streptococcus milleri group (S. milleri group)による化膿性感染症6症例を経験した。頭頸部の膿瘍3症例,腹膜炎術後感染2症例,食道癌術後感染1症例であった。6症例とも膿汁からS. milleri groupを検出した。4症例で混合感染を認め頭頸部感染では口腔内,腹腔内感染では消化管内に常在する微好気性あるいは嫌気性細菌であった。頸部膿瘍2症例は咽頭の感染症状から3,4日のうちに著しい頸部腫脹をきたし呼吸困難を主訴に来院し直ちに気道確保を必要とした。術後感染の3例は腹壁や皮下組織に膿瘍を形成し敗血症に至った。敗血症の症例では肺,肝,腎など多臓器障害を認めた。感染対策として嫌気性菌を含む広域スペクトラムの抗菌薬を使用し積極的にドレナージを行った。S. milleri groupによる感染では膿瘍形成,急速な腫脹と周囲への感染波及,嫌気性菌を含む他の細菌の混合感染に特徴があると思われた。