日本集中治療医学会雑誌
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生体肝移植周術期の諸問題と対策
木内 哲也田中 紘一
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1999 年 6 巻 3 号 p. 181-187

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抄録

生体肝移植は,脳死肝移植が進まないという特殊な状況の下で,本邦を中心に急速な発達を遂げ,現在その臨床応用の10年目を迎えている。年少児に始まった適応は,年長児さらに成人へと拡がり,グラフトサイズ・ミスマッチの問題も右葉グラフトの安全な使用によってほぼ克服され,ウイルス性疾患や悪性腫瘍などへの適応拡大もなされている。こうした一方,症例を重ねて初めて明らかになる問題もあり,移植のタイミングと術前管理,周術期の潜在感染,慢性期の胆道合併症や難治性拒絶,移植後リンパ腫,原疾患の再発など未解決の問題も多い。これらの中には,小さい移植肝ゆえにより厳密な管理を要求されるものもある。今後はさらに,移植肝臓内科医の育成や周辺領域を含めた体制の一層の整備,公的補助による経済面のサポートなど,大きなシステムづくりが求められるとともに,脳死肝移植との円滑な相補体制が1日も早く確立されなければならない。

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