急性心筋梗塞症に対する急性期治療の目的は,急性期死亡率の減少のみならず長期予後の改善にある。そのためには梗塞サイズを縮小させることが必須である。この目的を達成するための急性期の治療目標は,早期に確実な再灌流療法を行うことである。それには地域および施設において,多数の症例に最も早く確実に再灌流が得られる体制づくりが必要である。特に胸痛症例の早期受診,心肺停止例への第1発見者による心肺蘇生法実施の普及,専門施設への迅速な搬送システムの確立,院内受け入れ体制の確立などが重要である。長期の予後改善には,急性期治療の段階から再灌流傷害の抑制,虚血傷害心筋の保護,開存冠血管の維持,リモデリング予防,各種薬物による2次予防を考慮した治療体系の確立が必要である。