高濃度酸素吸入によって生じた肺におけるDNA傷害が,一酸化窒素(NO)吸入により改善するか,増悪するかを明確にするため,DNAの酸化的損傷の指標の1つである8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)を測定した。Wister系ラットを,空気吸入群20匹,100%酸素吸入群10匹,酸素/NO吸入群(NO20ppm)10匹の3群に分類し,それぞれの吸入ガスに2日間曝露させた後,肺を摘出し凍結保存した。肺からDNAを抽出し酵素分解を行い,8-OHdG/dG×105を測定した。空気吸入群に比し,酸素吸入群,酸素/NO吸入群で8-OHdG/dG×105は有意に増加していた。高濃度酸素吸入は肺組織の細胞核のDNAの酸化的損傷を引き起こすことがわかった。また,酸素吸入群の方がより高値を示したが,酸素吸入群と酸素/NO吸入群との間には有意差を認めなかったことから,高濃度酸素吸入によって生じたDNA傷害はNO吸入併用により増悪しないことが明らかとなった。