抄録
パラチオンを服毒した慢性透析患者において,持続的血液透析(continuous venovenous hemodialysis,CVVHD)下におけるpralidoxime(2-PAM)薬物動態を検討しえた。症例は67歳の男性で,週3回の血液透析を受けていた。自殺企図にてパラチオン15mlを服毒し,アトロピン,2-PAMを併用した心肺蘇生に成功の後,ICUに収容した。筋攣縮や縮瞳などの症状の改善を目安にCVVHD施行下で2-PAM0.1g・hr-1を約20時間持続投与し,血中ならびに透析廃液中の2-PAM濃度を経時的に測定してCVVHDによる排泄と薬物動態を検討した。その結果,持続投与中の血中濃度は22~23mg・ml-1と高値であり,CVVHDによるクリアランスは約8.1ml・min-1と極めて小さく,半減期が健常人の1.1時間に比べ40時間と著明に延長することが判明した。有機リン中毒に対しCVVHD施行下で2-PAMを投与する場合,体外排泄の遅延による過剰投与に十分注意する必要があると考えられた。