2002 年 9 巻 2 号 p. 127-130
症例は35歳の女性。肺リンパ脈管筋腫症の診断で,死体左側片肺移植が施行された。術後の経気管支肺生検施行直後に呼吸困難感,頻呼吸が出現し,胸部単純X線写真で左側下肺の無気肺と右肺の著明な過膨張を認めた。そこでfull face mask装着下にBiPAP vision(R)を用いた非侵襲的陽圧換気(NPPV)を施行した。症状と動脈血酸素化の改善がみられ,いったんNPPVを中止し,ICUに収容した。収容後,自発呼吸下では努力様呼吸と酸素飽和度の低下がみられたためNPPVを再開した。本人の希望による中断を挟みながらNPPVを7.5時間施行した。自発呼吸下に呼吸状態が安定したためNPPVを中止した。その後,狭窄気管支の治療のためにステント留置術が施行された。術後は鼻カニューラによる酸素吸入で問題なく経過し,ICU収容後5日目に軽快退室した。本症例では肺移植後の気管狭窄に対しNPPVを施行することで,気管挿管することなく呼吸不全症状を改善できた。